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胎児の首のむくみとダウン症との関係について解説します。むくみの厚さをNTという数値で表します。ここでは首のむくみについて、NTの正常値、染色体異常の割合、首のむくみの原因などを詳しく説明します。
また本記事は、よりたしかな情報を届けるためにクリフム出生前診断クリニック胎児診断センターに監修を依頼しています。
NTはNuchal Translucencyの略です。妊娠11週から13週頃、超音波で観察したときに胎児の うなじの皮膚が浮き上がって膨らんだ形に見えるものです。膨らんでみえる部分は皮膚が局所的にむくみ状態になったものと考えられています。NTが分厚いと、染色体の異常である21トリソミー(ダウン症)の可能性や心臓病などの可能性が高くなると言われています。
NTの正常値は2.5~3mm以内といわれます。
NT (mm) |
染色体 異常の 確率 |
胎児死亡 になる 確率 |
赤ちゃん に奇形が ある確率 |
元気な 赤ちゃんが 生まれる確率 |
---|---|---|---|---|
3.5-4.4 | 21.1% | 2.7% | 10.0% | 70% |
4.5-5.4 | 33.3% | 3.4% | 18.5% | 50% |
5.5-6.4 | 50.5% | 10.1% | 24.2% | 30% |
6.5- | 64.5% | 19.7% | 46.2% | 15% |
(参照元:Souka AP1, Von Kaisenberg CS, Hyett JA, Sonek JD, Nicolaides KH.Increased nuchal translucency with normal karyotype. Am J Obstet Gynecol. 2005 Apr;192(4):1005-21.)
ダウン症だけでなくNTの数値が高いほど、染色体異常や胎児奇形の出生率が高くなることがわかります。
NTが厚いとダウン症の可能性が高くなるのは事実です。しかし厚いからといってダウン症であると確定はできず、正常値だからといって100%健康な子が生まれると確定もできません。数値が正常範囲の胎児でも、ダウン症の子が生まれることもあります。
つまりNTだけではダウン症や胎児異常を確定できないということ。初期血清マーカーとの組み合わせ検査や超音波でNT以外の項目も検査するなど、ダウン症の可能性は総合的に診断されるものなのです。
胎児の首のむくみを測定するには、通常の妊婦健診で使うよりも精度の高い超音波検査が必要です。NT測定は、エコーのちょっとした角度の違いや、わずか10分の1ミリ単位で結果が大きく変わるため、技術が求められます。 FMF(Fetal Medicine Foundation)というイギリスの胎児医学財団によって認定されるNT測定資格が国際的にはもっとも一般的です。
FMFは産婦人科医なら誰でも持っているわけではなく、十分なトレーニングを受けた医師が持つ資格で、国内の資格者もまだ多くありません。
ほとんどの場合は大人のむくみと同じく一時的な生理現象です。大人でも一日中立ち仕事をしたりお酒を飲んだ次の日にはむくみが見られますよね。妊娠11〜13週の赤ちゃんはまだ小さくて循環機能が未熟であり、むくみをコントロールできません。むくみが生理的なものか病的なものかはNTを見るだけでは分からないのです。
胎児の首のむくみを指摘された場合は、次の検査を受けるという選択肢があります。
【NTが分厚い(首にむくみがある)と言われたら】
超音波検査を踏まえて検査に踏みきる場合、大きくスクリーニング検査(非確定検査)と確定検査の2つに分けられます。
非確定検査としては、NIPTやコンバインド検査が挙げられます。あくまでも非確定検査なので、結果が陰性だとしても染色体異常の可能性がゼロであると言いきることはできません。NIPTで陰性と出た場合は、その他の染色体異常の可能性があるため、結局のところ絨毛検査・羊水検査を受けることになることが多いものです。
コンバインド検査の場合にはNTのミリ数が要素にあるため、NTが分厚い人はコンバインド検査陽性となる可能性が高く、陽性を確認してから絨毛検査・羊水検査に進むことになります。
確定検査では絨毛検査や羊水検査が挙げられますが、母体の血液検査で受けられる非確定検査と違って、お腹に針を刺して絨毛や羊水を採取するため、流産のリスクがともないますが、NTが分厚いと言われた場合にはトリソミー以外の染色体異常の可能性も十分にあるため、最初から確定検査を受ける方が回り道をしなくて良いとも言えます。
また、NTが分厚いと言われた場合には、通常の絨毛検査・羊水検査では確認できないような染色体異常、あるいは心臓や腎臓その他の形態の異常の可能性もあるため、詳しい超音波検査を受けることが勧められます。場合によっては、絨毛・羊水検査でもっと細かい染色体異常などがないかを確認できる施設を選択することもすすめられます。
検査を受けるかどうか、検査を受けたあとにどんな未来を歩んでいきたいのか、まずはパートナーとじっくり相談してください。お腹の中の赤ちゃんのことなので、ママが1人で抱え込み、悩むことではないのです。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
むくみがあると聞くと、とても心配ですよね。でもむくみがあるだけで病気は確定しません。NTは0.1~2mmの違いでも診断が変わるので、正確な測定が求められるものです。
クリフム出生前診断クリニックは、超音波検査の胎児ドックに力を入れています。FMFのNT資格を持っているものが3名在籍し、私自身は2007年に日本で初めてFMFの資格を取得しました。
クリフム出生前診断クリニックの胎児ドックでは、超音波によってNTの厚さ以外にも赤ちゃんを全身すみずみチェックして診断しています。少しでも心配な方は出生前診断を受けてみてはいかがでしょうか。むくみは一時的な生理現象のことも多いのです。胎児ドックなどの出生前診断は不安を解消するためのオプションと思って、クリフム出生前診断クリニックにぜひいらしてください。
夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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