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こちらのページでは、出生前診断でわかる横隔膜ヘルニアの症状や治療法などをまとめています。
横隔膜ヘルニアとは、胸とお腹を隔てる横隔膜の形成が不完全だったために、横隔膜に孔があいている病気のことです。そのために腸や胃、肝臓、脾臓などが胸の中に入り込み肺を圧迫し、呼吸困難や消化管の通過障害を生じさせます。
先天性の横隔膜ヘルニアは、出生前に超音波検査などで診断される例が多くなっています。新生児期に発症する先天性横隔膜ヘルニアは、国内では年間200例に満たない希少疾患の1つでもあります。
横隔膜ヘルニアは、胎児の超音波検査で出生前に判明することがあります。胃泡(いほう)の位置や心臓の位置が通常と異なっているためです。また羊水が多いことも特徴と言えます。
横隔膜ヘルニアの疑いがある場合、超音波検査やMRI検査で肝臓や胃泡の位置など胸の中に入り込んでいる臓器の状態や肺の大きさなどから重症度を確認するほか、他の合併症などがないかを注意深く観察します。超音波や胎児MRIである程度の重症度がわかります。
ママのお腹の中で成長する過程でもともとつながっていた胸腔と腹腔は、胎生8週目の頃から襞(ひだ)の融合により分離されはじめます。先天性横隔膜へルニアは、胎児の成長過程で横隔膜がうまく作られないことによって起こります。
原因ははっきり解明されていないのが現状です。
横隔膜に孔があく病気である横隔膜ヘルニアは、胸に臓器が入り込んで肺を圧迫するため、呼吸困難や消化管の通過障害などを起こします。
生まれつき横隔膜に孔があいている先天性のものは、横隔膜の後方の外側に孔があいている「胸腹裂孔ヘルニア(ボホダレク孔ヘルニア)」と、前方内側に孔があいている「胸骨後ヘルニア」に大きく分けられます。
疾患の多くはボホダレク孔ヘルニアで、その90%の患者さんは左側に発症します。先天性の横隔膜ヘルニアは、胎児期より症状が見られるのが特徴ですが、なかには遅発性で出生後に初めて症状が現れることもあります。
横隔膜の穴を通じて臓器が胸の中に入り込む時期と、胎児の肺が発育する重要な時期が重なっているため、肺が十分育たない「肺低形成」が生じることもあります。
横隔膜の孔の大きさと臓器が胸に中に入り込む時期によって、病気の程度が大きく異なります。出生直後に亡くなってしまう重症例もあれば、新生児期は無症状で過ごす軽症例まであるのです。
重症度は個人差があります。重症の場合は、出生時に呼吸困難や血圧が保てないなどの循環不全のため、チアノーゼ、脈が弱い、無呼吸が起こり、蘇生処置を必要とすることがあります。
出生後1日以上経ってから症状が出るものは、呼吸障害が軽度のものが多い傾向にあるようです。
2011年に実施した全国調査[※1]では、横隔膜ヘルニアの新生児全体の75%が生存して退院しているという報告があります。しかし、救命後でも呼吸器感染や気管支喘息、慢性肺機能障害、慢性肺高血圧症などを発症しやすく、生存例の15~30%がこれらの後遺症や障害に悩まされると言われています。
※1…参照元:厚生労働省「294 先天性横隔膜ヘルニア」
[PDF]https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000085575.pdf
先天性横隔膜ヘルニアでは肺が十分に発達していないため、生まれてすぐに呼吸困難を起こしてしまうことが多いのが特徴です。妊娠中、横隔膜ヘルニアの疑いを指摘された場合、注意深く赤ちゃんの様子を観察し続け、小児外科のある病院で出産後速やかに治療を開始する必要があります。
横隔膜ヘルニアの重症度は個人差が大きく、生直後の呼吸管理法や治療法も少しずつ異なります。こちらでは、代表的な治療例を解説します。
胸に入り込んでいる臓器を正常な位置に戻し、横隔膜の孔を縫合する手術を行います。腹部を切開して行う手術方法のほか、傷が小さくて済む胸腔鏡手術を行う場合もあります。
重症例の場合は、まず呼吸や血液循環を保つ治療を優先し、それらが安定してから手術を行います。胸腔から脱出した臓器を戻してから横隔膜の修復を実施。横隔膜の欠損孔が小さければ直接縫合して閉じ、欠損が大きければ人工膜を用いてパッチ閉鎖を行います。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
横隔膜ヘルニアがある場合には、生直後の呼吸管理がとても大切になります。重症の場合に無理に普通に啼泣させようとすると、圧迫された肺を損傷してしまったりして命に関わることもあります。ですから出生前に正確な診断が必要になります。
横隔膜ヘルニアと似ている別の疾患がいくつかあります。横隔膜が緩んでいる横隔膜弛緩症、肺にできる腫瘍(先天性肺気道奇形)や肺分画症などがあります。
正確な診断のためには、超音波検査での精密検査(胎児ドック)を受けることが大切です。
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夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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