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このページでは、先天的な顔面の形成異常や病気についての種類やその症状、出生前の診断方法、治療法について紹介していきます。
顔面の外面的異常は、妊婦健診の超音波(エコー)検査で疑われるケースがあります。超音波検査をするときの胎児の位置や向きにもよりますが、目や唇の状態などは超音波検査で確認できます。
すべての顔面の形成異常がわかるわけではありませんが、妊婦健診や詳細な胎児超音波検査にて唇や顎の形状などの異常が判明することがあります。一般の超音波検診で顔面異常の疑いを指摘された場合は、胎児画像診断の専門家のいる医療機関で精密超音波検査を受けるのがおすすめです。鼻や口の異常や下顎の低形成や耳介低位など、異常をさらに詳しく診断することができるでしょう。
またいくつかの顔面の形成異常は、ダウン症(21トリソミー)といった染色体異常によって生じることがあるため、精密超音波検査の後に、絨毛検査や羊水検査などを受けて診断されることもあります。
胎児期になんらかの要因で起こる先天性の異常には、次のような疾患があります。
眼球突出は、片眼または両眼が前方に飛び出た状態のことです。出生後であれば悪性リンパ腫や甲状腺機能によるものが(甲状腺眼症やバセドウ病眼症)多いのですが、先天性の場合は、顔面の骨の異常や頭蓋骨早期癒合など頭蓋骨の変形によって起こるとされています。
一般的な超音波検査より、詳細に調べる精密超音波検査で判明することがあります。ただしすべてのケースに当てはまるわけではありません。
赤ちゃんの成長や症状を見ながら計画を立てます。必要だと判断された場合、頭蓋形成術による治療を行います。
鼻の骨が正常に形成されない先天的な奇形で、その多くは染色体異常によって生じるとされています。21トリソミー(ダウン症)児の60~70%、18トリソミー児、13トリソミー児の約半数に見られる症状です。
精密超音波検査で判明することが多いです。ダウン症の場合には妊娠初期に鼻骨の骨化が遅いことがあります。鼻骨の長さを確認したり首のうしろのむくみ(NT)を計測したりして、診断まで進みます。
鼻骨の形成不全は染色体異常によって起こっている可能性もあるため、確定検査が必要と判断された場合は絨毛検査や羊水検査に進むことがあります。
ただ、正常な赤ちゃんでも鼻骨が小さいことはありますので、染色体正常と診断された場合にはあまり心配することではありません。
鼻骨の形成不全はとくに治療はしません。
小顎症は遺伝子異常や薬物の影響などにより、下顎が正常に形成できなかった先天的奇形のことをいいます。ピエールロバンシークエンスやトリーチャーコリンズ症候群、染色体異常や遺伝子変異などで生じる下顎低形成の総称です。
顎が小さいために、呼吸障害や摂取障害を起こしやすいのが特徴になります。
特徴的な顔面が形成されているため、中期以降の超音波検査でピエールロバンシークエンスやトリーチャーコリンズ症候群の疑いが持たれます。診断を確定するためには染色体検査や遺伝子検査を進められることもあるでしょう。
下顎骨の形成手術で口腔容積を広げることができます。症状によって治療法が変わるので、小児科医や専門医に相談することになります。
もともと耳の形には個人差がありますが、耳の上部が頭に埋もれたようになっている「埋没耳」や、耳の一部や全てが欠損している「小耳症」は、審美的にも気になる先天性の形成異常です。
とくに「小耳症」は耳の穴がふさがっていたり(外耳道閉鎖)、耳穴が細くなっている(外耳道狭窄)、中耳や内耳部分の形成不全を伴うことが多く、聴覚的障害を抱えることになります。またメガネやマスクを耳に掛けられない、などの機能的問題も発生します。
小耳症は、耳が形作られる胎児期の過程で何らかの異常があり、未発達のままで止まったことで生じます。また「第一第二鰓弓症候群」という顔面の低形成疾患の一つでもあります。
詳しい画像診断ができる精密超音波検査で見つかることはありますが、時に片側だけの耳介形成異常があることもあります。耳介を両側とも確認するのは精密超音波検査でも非常に難しいので、生まれてからわかることもあります。
耳の形成異常の治療は、ケースバイケースです。出生後に専用の矯正器具を使って治療できるケースもあれば、外科的手術を行うこともあります。
小耳症の手術の場合は、お子さんが10歳くらいまで成長するのを待ち、患者本人の肋軟骨を採取して再生医療を用いた手術を実施します。
口唇裂(こうしんれつ)とは唇に裂け目や割れ目がある状態、顎裂(がくれつ)とは上の歯茎に割れ目があること、口蓋裂(こうがいれつ)とは口内の天井部分(口蓋)に割れ目や裂け目がある状態を言います。
日本人の赤ちゃんに比較的多い先天的な異常で、400人から600人に1人の割合で起こるとされていますが、その原因ははっきりしていません。
口唇裂・顎裂・口蓋裂の診断は出生後に確定しますが、口唇裂の多くは、中期以降の妊婦健診で疑われる場合があります。顎裂は歯茎の割れ目なので精密超音波検査でわかることが多いですが、口蓋裂は口内に発生するために、精密超音波検査で発見するのはなかなか困難です。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
赤ちゃんが生まれたらまず見るのが顔ですね。今は3D超音波で赤ちゃんの顔を写すことができるようになってきているので生まれる前に赤ちゃんの顔をみることができます。
口唇裂などは手術により綺麗に治療可能です。しかし、場合によりいろいろな手術を何回もしたり、機能的にいろいろな障害が出たり、ときに遺伝子変異や脳の異常を伴っていることもありますので、精密な検査をすることが望ましいと思います。
≫夫律子先生ってどんな人?
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夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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