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胎児の発育不全(発育不良)とは

お腹の中の赤ちゃんがうまく成長できない状態のことを、胎児発育不全(発育不良)と呼びます。このページでは、胎児発育不全の原因や治療法などについて解説します。

胎児発育不全(FGR)とはなにか

胎児発育不全(FGR:fetal growth restriction)とは、何らかの理由で子宮の中の赤ちゃんの成長が遅れたり止まったりしたために、週数相当の十分な発育が見られない状態のことです。

発育不全の赤ちゃんには、そうでない赤ちゃんに比べ、臓器の機能が上手く育っていないケースが多くみられます。そのため、FGRと診断された場合は、赤ちゃんに不幸が起こることのないよう、医師と妊婦さん・ご家族が協力しながら慎重な管理を行うことが求められます。

胎児発育不全の診断基準

日本では、お腹の中にいる赤ちゃんの大きさの度合いは、SD(標準偏差)という値で表現されます。

胎児発育不全と診断されるのは、赤ちゃんの頭やお腹などの大きさから導き出した推定体重が-1.5SDを下回る時です。簡単に言い換えると「同じ週数の赤ちゃんの推定体重のデータのうち、小さいほうから約7%の中に入ると、胎児発育不全と診断される」ということになります。

また、欧米ではこの基準を「10パーセンタイル(約-1.28SD)未満=同じ週数の赤ちゃんのうち、推定体重が下から10%の中に入る場合」としています。日本国内でも、こちらの数値に基づいて診断が行われることもあります。

赤ちゃんが小さめ=発育不全とは限らない

妊婦健診で「お腹の赤ちゃんは小さめですね」と言われると、妊婦さんやそのパートナーは心配な気持ちになるもの。しかし、赤ちゃんの推定体重はあくまでも「推定」であり、確定的なものではありません。発育の評価には、ある程度の時間が必要となるのです。

一度の検査で推定体重が小さくても、必ずしも発育不全だと決まったわけではありません。焦らずに次の検査を待ち、過度な不安によるストレスを溜めないよう心がけましょう。

胎児発育不全の診断=赤ちゃんに異常があることの診断ではない

胎児発育不全の診断を受けた赤ちゃん、つまり同じ週数の赤ちゃんのうち小さいほうから7%(10%)の中に入る赤ちゃんは、全員健康に問題があるというわけではありません。胎児発育不全と診断される赤ちゃんの中には、たまたま体が小さいだけで、健康に何ら問題のない赤ちゃんも多くいるのです。

しかし、何らかの原因によって赤ちゃんがうまく成長できないケースを「たまたま体が小さいだけ」と捉えることは避けなければなりません。そのため、胎児発育不全と診断される場合には、成長不全を招く原因となる要素の有無を慎重に調べる必要があります。

胎児発育不全の主な原因

胎児発育不全の原因となる要素には、さまざまなものがあります。時には、複数の原因が絡み合って発育不良を招いていることもあるのです。

体質によるもの

赤ちゃんの体質・個性により、たまたま体が小さかったケースです。他に明らかな原因が見当たらず、赤ちゃんの状態にも異常が見られない場合は、体質によるものの可能性が高いと判断されます。妊婦さん自身やご主人が小さく生まれたなど、家族性の場合もあります。

赤ちゃんの疾患

染色体異常

通常は2つである染色体の数が3つに増える疾患「18トリソミー」や「13トリソミー」を持つ赤ちゃんは、発育不全が起こることが多いです。その他の染色体構造異常などでも発育不全となることが多くあります。

先天的な疾患や体の異常

赤ちゃんの体の形に大きな異常がある場合や、心臓などの臓器に先天的な疾患がある場合には、発育不全が起こることがあります。

感染症

お腹の中の赤ちゃんが、お母さんを通じてサイトメガロウイルスや風疹、トキソプラズマといった感染症にかかると、発育不全の原因となることがあります。

母体の疾患

基礎疾患

赤ちゃんのママが高血圧や甲状腺疾患、糖尿病といった基礎疾患を持っていると、胎児発育遅延の原因となることがあります。

妊娠高血圧症候群

妊娠20週以降に高血圧が起こる「妊娠高血圧症候群」では、胎児発育不全を併発することがあります。

子宮の異常や疾患

生まれつきの子宮の形態異常や、子宮筋腫、子宮腺筋症といった疾患も胎児発育不全の原因となることがあります。

胎盤や臍帯(へその緒)の異常

胎盤の異常

胎盤の機能が低下していたり、腫瘍や出血などの異常があったりすると、赤ちゃんに酸素や栄養がうまく送られず、発育不全の原因となることがあります。

臍帯(へその緒)の異常

へその緒が胎盤の端や卵膜から出ていたり、ねじれが生じていたりすると、血流が阻害されて栄養や酸素を赤ちゃんにうまく運ぶことができず、発育不全の原因となることがあります。

環境によるもの

妊娠中に避けるべきとされている薬物を服用した場合や飲酒・喫煙などの習慣は、胎児発育不全を発症しやすくなるといわれています。

胎児発育不全と診断されたら

胎児発育不全の治療法

残念ながら、一度起きた発育不全を正常に戻す治療方法はまだ確立されていません。胎児発育不全と診断された場合は、推定される原因を取り除くとともに、赤ちゃんが少しでもお腹の中で大きく成長できるよう、安静に過ごすことが1つの治療となります。

原因の特定のためには、母体の血液検査や尿検査、赤ちゃんの詳細な超音波検査や染色体検査などを行います。これらの検査で原因の判別が困難な場合は、より細やかに赤ちゃんの様子を確認するために頻回な健診を受けたり、入院したりする必要があることも。

また、赤ちゃんをなるべく大きく育てるには、ママが心身ともにリラックスした状態でいることが大切です。こうすることで、少しでも子宮に血流を多くしてあげることができます。自分を責めたり、過度な不安を招くような情報に触れたりすることは避け、できるだけゆったりとした気持ちで過ごすことを心がけましょう。

胎児発育不全の管理

お腹の中の赤ちゃんが元気でいる限りは、分娩をできるだけ先に延ばし、赤ちゃんを少しでも胎内で大きく育てることを目指した管理を行います。

しかし、赤ちゃんに元気がない時や、これ以上お腹の中での成長が見込めない時は、早急に娩出し、保育器などで命を守りながら成長を待つ必要が出てきます。そのため、状況によってはNICU(新生児集中治療室)を備えた治療施設での妊娠管理を行わなければなりません。

分娩方法

胎児発育不全の赤ちゃんを出産する場合、帝王切開が必要になることが多いと言われています。しかし、赤ちゃんの大きさや元気さの度合いによっては、経腟分娩(通常分娩)が可能と判断されることもあり、必ずしも帝王切開になるとは限りません。

健やかな妊娠・出産のためにできること

より健やかな妊娠・出産のために自分で行える工夫には、次のようなものが挙げられます。

妊娠中の喫煙や飲酒は、胎児発育不全を含むトラブルのリスクを高めてしまう要素の1つです。妊娠中はもちろんのこと、可能であれば妊娠する前から禁煙・禁酒を行いましょう。そのほかに、きちんと栄養を摂ることや、医師の指示に従って無理のない範囲で体を動かすことも大切です。

また、胎児発育不全の原因の1つである風疹は、妊娠の前に予防接種を受けることで防ぐことができます。赤ちゃんはもちろんのこと、自分自身を守るためにもぜひ予防接種を受けましょう。

パートナーやご家族も一緒に取り組む

妊婦さん自身の喫煙はもちろん、副流煙もお腹の赤ちゃんに良くない影響を与えることが分かっています。赤ちゃんを授かった時・授かりたい時は、ママだけではなく、パパや他の同居家族も一緒に禁煙を行う必要があります。予防接種も同様に、家族そろって受けることが大切です。

また、お腹に赤ちゃんがいる女性が身体的・精神的なストレスを溜めると、妊娠高血圧症候群や胎児発育不全といったトラブルを招くことがあるといわれています。パートナーや他のご家族は、妊婦さんが心身ともにリラックスして過ごせるよう、積極的なサポートを行うとよいでしょう。

Dr.ぷぅからの一言
夫律子先生

赤ちゃんが小さいということで来院される患者様が多くおられます。胎児の遺伝学的検査や詳しい超音波検査の結果、家族性で問題がないケースもありますが、妊娠高血圧症に先行して赤ちゃんが小さいことが目立ったりする場合もあります。また、1-2週ごとに胎児測定や胎児胎盤血流を見ていきながらフォローしていく必要があります。上にも書いてあるようにしっかり赤ちゃんの観察をしてもらえる施設でみてもらいながら、妊婦さんはゆったり過ごすことが大切です。

夫律子先生

夫 律子(ぷぅ りつこ)

クリフム出生前診断クリニック胎児診断センター・胎児脳センター 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/臨床遺伝専門医ほか)

【監修】クリフム
出生前診断クリニック
日本初の胎児診断専門施設

分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。

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