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性染色体の異常によって発生する「クラインフェルター症候群」の症状や診断方法をはじめ、出生前診断でわかることなのかどうか解説します。
クラインフェルター症候群とは、男性のみに発生する先天的な染色体異常による症状です。
お腹の赤ちゃんの性別は、XとYの性染色体によって決定します。2本のX染色体なら女の子、1本のX染色体と1本のY染色体なら男の子です。しかし、X染色体やY染色体の本数が異なる性染色体異常は珍しくありません。2本(時に3本)のX染色体と1本のY染色体を持って生まれてくる男の子をクラインフェルター症候群と呼びます。
ほとんどのクラインフェルター症候群は、見た目や知能に問題のない方が多いのです。そのような方の場合、思春期あるいは結婚後に判明することが多いのが現状です。
クラインフェルター症候群の男性は、テストステロン(男性ホルモン)が少ないために、声変りがしない・ひげなどの体毛が薄いといった症状を心配して、診察を受けたり、結婚後に不妊症治療の血液検査を受けたりすることで初めてわかる場合もあります。
出生前にお腹の赤ちゃんがクラインフェルター症候群であるとわかるケースもあります。クラインフェルター症候群であっても妊娠の障害や胎児異常の原因になりませんが、たまたま染色体検査を行い、クラインフェルター症候群が偶然判明することがほとんどです。
たとえば妊婦さんが35歳以上であれば出生前診断を受けるケースや、過去に染色体異常の赤ちゃんの妊娠の経験があるために羊水検査を受けるケースなどが該当します。
クラインフェルター症候群は、余分なX染色体を持つことで生じますが、その赤ちゃんのパパとママの染色体に異常があることはほとんどありません。
今のところ、下記のようなことが原因で「X染色体」の数が多くなるのでは、と言われています。
1942年にアメリカのハリー・クラインフェルター博士によって発見されたことで、この名前が付きました。人間の染色体が確認される10年以上も前のことです。彼は男性ホルモンの低値と身体的特徴を持つ症候群を報告しましたが、後にこの症候群からXXY染色体を持つ男性が発見され、彼の名前が付けられたのです(XXY男性と呼ばれることもあります)。
クラインフェルター症候群は、男性だけに起こる性染色体の数の異常で、正常男性より「X」の数が一つ以上多い生まれつきの染色体異常です。クラインフェルター症候群の多くは「XXY」であり、X染色体の数が2本以上の障害が重い「XXXY」「XXXXY」などの染色体異常はまれなケースとなります。
500人から1,000人の男子に1人の頻度で出生すると言われていますが、思春期以降に判明するケースも多いため、実際の出生頻度は少し多いかもしれません。
クラインフェルター症候群の症状は、個人差があります。※下記の特徴すべての項目に当てはまるとは限りません。
手足が長く、すらりとした体型が多いことは事実です。「背が低い男性」が少ないことも事実ですが、日本人ではあまり高身長にはなりにくいようです。身体・精神の男性化はきちんと起こります。肥満が合併するとポッチャリ型の体型になりやすいので、食生活や運動に気をつけます。一般に運動が苦手と言われますが、例外も多く、育児環境や個性により差があります。
クラインフェルター症候群と発達障害の関係は、昔から議論されてきました。小学校入学前の子ども達には誰でも50人に1人は何らかの発達障害が発見されます。それらの子ども達の中で、クラインフェルター症候群が占める割合はごく僅かなので、大多数のクラインフェルター症候群(1/500〜1/1000の出生数)の方は、普通に学校生活を送っていることには間違いありません。
幼児期に見つかる多くの発達障害の原因は不明なのですが、たまたまクラインフェルター症候群が見つかると報告されるので、統計学的な抽出の偏りが発達障害説の背景にあると考えられています。
英国では90%のクラインフェルター症候群の方は「自分がそうとは知らず」に一生を終わると言われています。
※上記の症状は幼児期に見つかる発達障害の主症状で、大部分は染色体異常と関係しません。
知能発達については、問題ない方が多いようです。X染色体の数が増えるほど、知能指数が低下するという報告もありますが、1本の増加はあまり影響しません(Xを3本持っている女性も珍しくありません。ほとんどの方は自分がそうだと知らずに一生を送ります)。
染色体の数の異常に対する根本的な治療法はありませんが、結婚など何らかの理由で自分がクラインフェルター症候群であることがわかった場合は、通常男性ホルモンのテストステロンを定期的に筋肉注射する治療法が取られています。
テストステロンを2週間から4週間ごとに補充することで、ホルモン欠乏によるだるさなどを改善し、筋肉量の維持、正常な男性に近い性腺機能を維持することができます。
いまは、不妊治療がとても発達していて、クラインフェルター症候群の方でも自分の精子で子どもができる方が増えてきています。クラインフェルター症候群だから自分の子供は持てないと諦めてしまわず、専門医に相談することができます。クラインフェルター症候群の父親から採取した精子が染色体異常を生む原因になることはありません。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
クラインフェルターはたまたま見つかることが多いですが、きちんと遺伝カウンセリングを受け、元気な男の子を産み育てているご両親がたくさんいらっしゃいます。生まれてきた赤ちゃんを育てているうちにクラインフェルターということも忘れてしまうという声をよく聞きます。また、不妊治療の検査でたまたまご主人がクラインフェルター症候群であることがわかったというご夫婦の赤ちゃんを診察することもあります。名前がついているので怖い病気のように感じるかもしれませんが、しっかり遺伝カウンセリングを受けましょう。
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夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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