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胎児の心臓異常の例と可能性のある疾病について詳しく解説します。また本記事は、編集部がよりたしかな情報を届けるためにクリフム出生前診断クリニック胎児診断センターに監修を依頼しています。
妊娠初期の妊婦健診で心臓について何も触れられなかった…と心配される方がいらっしゃるかもしれません。妊娠初期の胎児の心臓については、動いているかどうかのチェックが大半です。まだまだ発育途中で心臓が非常に小さいためです。心臓の異常について、もし何かしら妊婦健診で指摘されるとしたら妊娠中期・後期でしょう。
何の治療もいらない軽度なものから、産後すぐに手術が必要な重度のものまで、100人に1人が産まれたときに心臓に何らかの問題を持っています。
遺伝的な要因もありますが、ほとんどの場合は原因が特定できません。母体の生活環境は関係なく、生命の誕生過程での少しの変化が臓器の発育と形成に異常を及ぼすと考えられています。
心臓の中の左心室と右心室を仕切る壁に穴があいている心室中隔欠損症の可能性があります。先天性心疾患の60%を占めていると言われ、ダウン症や18トリソミーの赤ちゃんにもよく見られます。小さな穴なら、5人に1人は自然に塞がりますが、大きい穴の場合は血液の逆流を防ぐために手術でこの穴を塞ぐことになります。
右心房と左心房の間にも心房中隔があり、心房中隔欠損症という病気もありますが、胎児の時期には心房中隔のところに卵円孔という穴が空いていなければならず、胎児期の診断はとても難しいと言われています。
心房中隔と心室中隔のちょうど間のところ(心内膜)のところが欠損して、右の三尖弁と左の僧帽弁がひとつの弁のように動いている場合があり(共通房室弁といいます)、房室中隔欠損と呼ばれています。ダウン症の赤ちゃんにもよくみられるものですが、生まれてからきちんと手術をすれば予後は良いと言われています。
胎児期は酸素分圧の高い血液を脳へ優先的に送るため、臍静脈から大静脈につながる静脈管が存在します。静脈管血流の逆流が見られる場合、染色体異常や心形態異常の可能性が考えられます。
静脈管血流の逆流は正常染色胎児の3%で見られますが、ダウン症児では65%、18トリソミーと13トリソミーでも多く見られます。
また心臓の右心室と右心房の間には三尖弁があり、通常血液は弁を通って心房から心室へ送られますが、中には弁に漏れがあり逆流する場合も。正常染色体胎児の1%で見られますが、ダウン症児では55%、18トリソミー児や13トリソミー児でも多く見られます。
ただし初期に逆流が見られたとしても、多くの場合は妊娠中に自然に消失し正常な妊娠過程をたどります。
胎児の心臓に左右差があるときには、いろいろな心臓の病気の可能性があります。たとえば普通は左心室・右心室から大動脈・肺動脈という大きな血管が出ているのですが、右心室のほうから二本ともでている両大血管右室起始症という病気があります。出ている二本の血管の位置関係などからとても診断が難しい場合や他の疾患名がつくような場合もあります。
また、左心の形成がとても未熟で左心室からでている大動脈もとても細い左心低形成という病気もあります。この場合には生まれてから右心室だけで心臓というポンプ機能を維持するために手術をする必要があります。
その他たくさんの先天性心臓病がありますが、ここ20-30年で確立してきた小児心臓外科手術により、治療して元気に普通の生活をしている子どもさんもたくさんいます。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
胎児の心臓に異常がある場合は、ダウン症の他にも合併症の可能性が考えられます。そう言われると怖く感じてしまうかもしれませんが、決して怖がらせたいわけではないことをご理解ください。元気な赤ちゃんを産んでほしいので言うのです。
出産後に適切な医療を受けるためにも、ご家族が心の準備をするためにも、生まれる前に正確な診断をしておくことが非常に大切です。もし妊婦健診で何か心臓の異常が見つかった場合は、詳しい検査をした方が良いでしょう。その検査というのが出生前診断です。
私のクリニックでは出生前診断としてまず、より詳しい超音波検査として胎児ドックを行います。心臓病が心配な赤ちゃんはさらに小児心臓の専門家とタイアップして見ていくようにしています。ダウン症以外にも、たくさんの赤ちゃんの病気の可能性を診察できるので、少しでも不安があるという方はぜひいらしてください。
夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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出生前診断とは