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出生前診断でわかることとはいったい何でしょうか。ダウン症だけでなくその他に考える病気も合わせて、出生確率をまとめた表とともに解説します。
また、こちらはクリフム出生前診断クリニック胎児診断センターに監修を依頼しています。
身体的特徴 | 合併症 | 発達予後 | 寿命 | |
---|---|---|---|---|
21トリソミー(ダウン症) | 成長障害 |
心疾患(50%) |
早期から療育すると知的・身体的な能力が向上するため、支援クラスを利用して学校や特別支援学校に通学している子供が大勢います。健常者と同じように生活する方も多く、大学進学、就業、芸術の才能を生かして活躍される方もいます。 |
50~60歳 |
18トリソミー | 胎児期からの成長障害 |
心疾患(90%) |
知的・身体的に強い遅れが生じます。言葉は上手に使えませんが、サインや表情でこたえられる場合もあります。また、気管挿管や呼吸補助が必要となることも多いです。 |
胎児での死亡率は50%と高い確率を示しています。 |
13トリソミー | 成長障害 |
心疾患(80%) |
知的・身体的に強い遅れが生じます。言葉は上手に使えませんが、サインや表情でこたえられる場合もあります。また、気管挿管や呼吸補助が必要となることも多いです。 |
90%が1年以内の寿命だと言われています。 |
21トリソミー(ダウン症) | 18トリソミー | 13トリソミー | |
---|---|---|---|
身体的特徴 | 成長障害 筋肉の緊張低下 特徴的な顔形 |
胎児期からの成長障害 呼吸障害 摂食障害 |
成長障害 呼吸障害 摂食障害 |
合併症 | 心疾患(50%) 消化管奇形(10%) 甲状腺疾患 耳鼻科疾患 眼科的疾患 など |
心疾患(90%) 消化管奇形 口唇口蓋裂 関節拘縮 (間接の曲げ伸ばしの困難) など |
心疾患(80%) 口唇口蓋裂 多指・多趾症 (手足の指が多い疾患) 目の疾患 鼻の疾患 全前脳胞症 (左右の大脳半球の分離不全) など |
発達予後 | 早期から療育すると知的・身体的な能力が向上するため、支援クラスを利用して学校や特別支援学校に通学している子供が大勢います。健常者と同じように生活する方も多く、大学進学、就業、芸術の才能を生かして活躍される方もいます。 | 知的・身体的に強い遅れが生じます。言葉は上手に使えませんが、サインや表情でこたえられる場合もあります。また、気管挿管や呼吸補助が必要となることも多いです。 | 知的・身体的に強い遅れが生じます。言葉は上手に使えませんが、サインや表情でこたえられる場合もあります。また、気管挿管や呼吸補助が必要となることも多いです。 |
寿命 | 50~60歳 | 胎児での死亡率は50%と高い確率を示しています。 50%の出生児は1か月、90%が1年程だと言われています。 |
90%が1年以内の寿命だと言われています。 |
※必ず合併症を引き起こすとは限りません。症状の程度や発達予後、寿命には個人差があります。
妊娠12週における母体年齢と各トリソミーの推定確率
年齢 | 21 トリソミー |
18 トリソミー |
13 トリソミー |
---|---|---|---|
20歳 | 1/1,068 | 1/2,484 | 1/7,826 |
25歳 | 1/946 | 1/2,200 | 1/6,930 |
30歳 | 1/626 | 1/1,456 | 1/4,585 |
31歳 | 1/543 | 1/1,263 | 1/3,980 |
32歳 | 1/461 | 1/1,072 | 1/3,378 |
33歳 | 1/383 | 1/8,91 | 1/2,806 |
34歳 | 1/312 | 1/725 | 1/2,284 |
35歳 | 1/249 | 1/580 | 1/1,826 |
36歳 | 1/196 | 1/456 | 1/1,437 |
37歳 | 1/152 | 1/354 | 1/1,116 |
38歳 | 1/117 | 1/272 | 1/858 |
39歳 | 1/89 | 1/208 | 1/654 |
40歳 | 1/68 | 1/157 | 1/495 |
41歳 | 1/51 | 1/118 | 1/373 |
42歳 | 1/38 | 1/89 | 1/280 |
(参照元:Kypros H. Nicolaides: The 11-13⁺⁶weeks scan. Fetal Medicine Foundation, London, 2004.[PDF])
ダウン症の出生確率は、やはり20代より、30代以降にリスクが高まっていきます。18トリソミーや13トリソミーも同様で、高齢出産になればなるほど染色体疾患を持つ赤ちゃんの生まれる可能性は高くなります。
ダウン症は、通常2本であるはずの21番染色体が3本と1本多い染色体異常で「21トリソミー」とも呼ばれます。子どもには発達の遅れがあって、心疾患などの合併症を伴う場合も少なくありません。
21番染色体が3本あることで起こるのがダウン症ですが、その他の染色体の数が多いケースもあります。18番染色体が3本あると18トリソミー、13番染色体が3本あると13トリソミーです。染色体の一部だけが3個あったり1個だけだったりする異常もあるので、症状はさまざまで成長障がいや発達の遅れがみられることも多いです。
母体血清マーカー検査やNIPT、胎児ドックで、ダウン症や18トリソミー・13トリソミーの可能性がわかります。ただしこの3つの病気は、胎児に見られる先天性異常の内、ほんの2割程度です。 染色体はすべての細胞の中にあるもので、生まれてからでも異常な染色体を治療することはできません。また生まれてから染色体の病気がなくなることもありません。
先天性な脳疾患のなかでは「無頭蓋症・無脳症」や「水頭症」などが知られていますが、それ以外にもさまざまな疾患が存在します。中枢神経(脳と脊髄)は、受精卵の着床後、20日足らずの時期から形成スタート。その後は複雑かつ長期にわたり発達するため、障害を受ける可能性が他の部位に比べて高いとされています。
出生前に実施する精密超音波検査では、上記の疾患以外にも、くも膜嚢胞、脳梁欠損症、全前脳胞症、頭蓋骨縫合早期癒合症などが疑われたり診断されたりする場合があります。
近年では大脳皮質発達不全が妊娠中期に疑われることが報告されていて、日本ではクリフム出生前診断クリニックで診療が行われています。
顔面の外面的異常は、妊婦健診の超音波(エコー)検査で疑われるケースがあります。日本人に比較的多く発生する先天的顔面異常「口唇裂」も、かなりの確率で超音波検査によって判明します。
その他、目や鼻の位置や形、顎が小さい、左右の顔が非対称であるなども、出生前診断の精密超音波検査で診ていくことができます。顔面異常が起こる要因は、頭蓋骨や脳の形成異常、染色体異常や遺伝子変異など、さまざまです。
心臓の形態や大血管、肺などに異常を持って生まれてくる赤ちゃんは、100人に1人と言われています。代表的な疾患は「心室中隔欠損症」で、心疾患のうちの50~60%を占めます。それ以外にも、心臓の4つの部屋がうまく形成されていない、弁の閉鎖不全や大血管の狭窄、大血管の走行異常、肺の嚢胞性腫瘍や、横隔膜ヘルニアで腸が胸郭に入り肺の低形成が起こるなど多岐にわたります。
医療の進歩により、これらの疾患すべてではありませんが、胎児期に発見されることが増えてきました。多くは妊娠の後半期に診断されることが多いですが、徐々に妊娠中期や妊娠初期にも診断されることが出てきました。
心臓血管系の異常の診断は時に難しく、小児循環器専門医による診断でも妊娠週数が進むにつれて診断名が変わったりすることもありますが、もっとも望ましいのは、生まれてからすぐに赤ちゃんがショック状態になるような心臓病が胎児期に少しでも正確に見つかり、生まれてから赤ちゃんが低酸素にならないよう分娩施設を選んだりすることができるようにすることです。
精密超音波検査で疑わしいとされる異常が見つかった場合は、さらに詳しく検査して診断し、出生時に必要な処置が適切に行えるケースが多くなっています。
「脳の病気」も様々です。「水頭症」をよく耳にすると思います。
「水頭症」とは、脳室に水がたくさんたまっている状態を言います。
脳室とは、脳からでる水を貯めておく部分のことで、その水は脳室から水路を通って出ていき、脳表面から吸収されます。妊娠初期の胎児の頭の中のほとんどの部分を、脳室が占めています。発育とともに頭の中での脳室の割合は小さくなっていきます。
「水頭症」は、単に水路が詰まって水が流れなくなって起こる場合と、脳の発達が遅れたりすることで脳室が大きいままの状態である場合があります。「脳室拡大」「水頭症」は病気の名前ではなく、大切なのはその原因。単純に水が流れないだけであれば、出産後に水路をつくってあげる手術をすれば、正常に発達して元気に大きくなります。
脳室が拡大する理由が大脳発達にある場合は、その原因となる脳の病気により様々な発達障害がでる可能性があります。その症状にも個人差があります。
また、脳室が一時的に大きくてもその後自然に正常となり何の問題もないこともあります。脳は胎児の間にどんどんと形がかわっていくので、脳室をきちんと評価して、脳室拡大や水頭症の原因を診断するためには専門家による出生前診断が必要です。
無頭蓋症・無脳症とは、先天的に頭蓋骨の形成ができていなかったり、大脳や小脳の欠損が見られたりする症状のことです。妊娠超初期(妊娠4~5週)に神経管が正常に発達しないと神経管に障害が起こり脳や脊髄の発達に悪影響を及ぼす、神経管閉鎖障害の一種とされています。
発症原因ははっきりしたことは判明していません。
無頭蓋症の診断は、妊娠初期の妊婦健診でわかります。超音波(エコー)検査で頭部の形の異常がみられる場合、無頭蓋症が疑われますが、無頭蓋症に似た他の疾患もあるため、専門家にみてもらうようにすることが望ましいです。
頭蓋骨の欠損部から頭蓋骨の中身が外に出ている状態を「脳瘤」と呼びます。胎児期に頭蓋形成が正常にできなかったため発生する先天的な病変です。飛び出た瘤が髄膜と脳脊髄液だけのものを「髄膜瘤」、脳組織が含まれる場合は「髄膜脳瘤」と言います。
妊婦健診の超音波検査で発見されることが多く、出生後に赤ちゃんの頭皮に柔らかい瘤のようなものが見つかることで、診断される場合もあります。
一般的な治療法は、出生後に小児脳神経外科で外科手術をおこない、脳瘤を除去する方法が取られます。
脳の周囲はくも膜という被膜で覆われています。その膜の中に髄液が貯まり、嚢胞となって脳を圧迫する疾患を「くも膜嚢胞」と呼びます。生まれつきの先天的な病変で、約100人に1人の頻度で発生します。
このくも膜嚢胞は中身が髄液であるため良性です。胎児の成長とともに小さくなったり、出生しても無症状のまま経過観察したりするケースもありますが、嚢胞が大きくなると頭痛や手足の麻痺などを起こす危険性もあります。
出生前に妊婦健診の超音波検査で疑われるのは、実際のくも膜嚢胞の1%くらいと非常にまれで、見つかっても妊娠中に嚢胞が縮んでしまうこともあります。出生後の治療は、MRIで定期的に経過を診て判断します。大きさによっては外科的手術を行うことになります。
「心臓の病気」は多くの種類があり、生まれてから自然に治るものから、手術を何回かしなければならないものまで様々です。一番多いのは「心室中隔欠損」です。これは左右の心室の間にある壁に、穴があいている病気です。心臓病の50-60%くらいを占めます。
「心室中隔欠損」があっても無症状の場合もあり、生まれてから穴が自然に閉じることもありますが大きな穴があり、症状が出る時には手術が必要です。「心室中隔欠損」が疑われる場合には他の心臓の病気が一緒にあることもあります。
その他にも多くの先天性心疾患といわれる病気がありますが、羊水の中で生活している胎児は心臓病があっても、呼吸をしているわけではなく、ママの胎盤からもらう酸素が体にしっかりと循環するので症状が出ることはあまりありません。
生まれてからは肺で呼吸をするので、心臓病があるとうまく酸素が循環できないことから症状がいろいろと出てくることになります。
手術をすれば、普通に大きくなり特に問題なく生活ができることも多いです。心臓病があると生まれてから急に症状が現れ、赤ちゃんが苦しくなることも。早めにわかれば小児心臓の専門医がいる病院での出産を計画したり、赤ちゃんが苦しい思いをしなくていいようにしてあげられます。
先天性肺嚢胞性腺腫様形成異常とは、先天的に肺に嚢胞(のうほう)と呼ばれる病変が複数できてしまう疾患のことです。英語の疾患名を略してCCAMとも呼ばれており、最近では別の分類でCPAMと呼ばれることも多くなりました。
肺が形成される妊娠2カ月の頃に、何らかの原因により形成異常になると言われており、出生前の超音波検査で心臓位置の異常などから診断されることが多いです。
CCAMは一度診断されても、妊娠後期に徐々に小さくなるケースも多くあるので、超音波検査やMRIなどで経過を観察していくことが大切。そのまま嚢胞が残ると、出産後、通常の肺を圧迫して呼吸障害を起こす可能性もあります。CCAMは赤ちゃんの状態をみながら手術で切除するのが一般的です。
先天性肺嚢胞性腺腫様形成異常(CCAM)・先天性肺気道奇形(CPAM)をもっと詳しく
「口唇口蓋裂」は、先天的に上唇や上顎(歯茎)、口蓋と呼ばれる口の中の上のドームが、くっつかずに開いたままになって、さけたように見える病気です。それぞれ口唇裂・顎裂・口蓋裂と呼ばれます。
口蓋裂だけの場合には出生前診断で見つかることは少ないです。いずれの場合にも生まれてから手術をすることできちんと治療することが可能です。
口蓋裂があると、生まれてから飲み込みや発音に問題が出ることがありますが、これもきちんと対処して治療することが可能です。口唇口蓋裂は、染色体の病気や他の病気に合併することもあるので、出生前診断で染色体やその他の病気がないかをきちんと調べておく必要があります。
背骨(脊椎)の中にはとても大切な神経である脊髄神経が入っています。「二分脊椎」はこの背骨の一部がうまく閉じないために、髄膜や脊髄神経が外にでてしまう病気です。
髄液のふくろ(髄膜)だけが外にでていて脊髄神経が出ていない「髄膜瘤」と呼ばれる状態であれば、症状は何もでないことも大半です。脊髄神経が外に出ている「脊髄髄膜瘤」とよばれる状態であれば、歩行や排尿などに関係する障害が出る可能性が高くなりますが、二分脊椎の場所や程度にもより症状は軽度であることもあります。
二分脊椎がある場合には脳室拡大や水頭症が起こることも多いですが、脳自体に問題があるわけではなく単純に水路の流れが悪くなるためで、手術をすることで改善できます。
二分脊椎がある場合には、生まれてすぐの手術が必要なので、小児脳神経外科がある病院で分娩することが望ましく、出生前診断で分かって入れば生まれてからの処置もスムースになります。
新生児の外科疾患のうち、腸の病気である「先天性腸閉鎖症」や「腸狭窄症」は、10~20%を占めると言われています。この病気は、生まれつき十二指腸や小腸の一部が途切れていたり、腸管が狭くなっていたりする疾患です。内臓がつくられる段階で何かしらの問題が生じる、または外部的影響が加わることで起こる可能性があげられています。
十二指腸閉鎖症はダウン症にも多く心臓病などの合併が見られる場合がありますが、小腸閉鎖症の場合、合併症発生率は低めです。
羊水過多や胎児の消化管拡張サインなどが見られるため、胎児超音波診断で判明するケースも多く、その場合、出産後の緊急的処置に備えて外科手術ができるような高次医療センターや周産期センターでの分娩が望まれます。
赤ちゃんの先天的な腹部周辺の疾患に「横隔膜ヘルニア」があります。胸とお腹を隔てる横隔膜の形成が不完全なために、横隔膜に孔があいている病気のことで、国内では年間200例に満たない希少疾患の1つです。
横隔膜に孔があるため、胃や肝臓、腸などが胸の中に入り込み、肺を圧迫して呼吸困難や消化管の通過障害をひき起こします。横隔膜ヘルニアは、羊水の量が多かったり胃泡や心臓の位置が通常と異なったりしているため、出生前の超音波検査や胎児ドックなどで比較的診断されやすい疾患です。
横隔膜ヘルニアの疑いがあれば、詳細な超音波検査やMRI検査などで注意深く経過を観察して出産直後に適切な対応ができるよう備えられます。
また、「臍帯ヘルニア」や「腹壁破裂」も先天的な腹部周囲の疾患です。「臍帯ヘルニア」とは、胃や腸などの臓器がお腹の外側にはみ出した状態になっていることで、その多くは羊膜や臍帯膠質(さいたいこうしつ)の膜に覆われています。
「腹壁破裂」は、へそのそばの腹部に穴が開いているために、胃や腸、肝臓などの一部が腹部の外側に出ている状態のことです。臍帯ヘルニアでは他の合併症や染色体異常の可能性も多いとされているため、詳細な胎児ドックや絨毛検査・羊水検査などでの染色体検査を受けておく必要があります。どちらの状態も妊娠12週目以降の超音波検査で診断をされることが多く、母体や胎児の状態を注意深く観察できて出産後速やかに手術ができるよう、周産期医療センターや小児外科が整っている医療機関で診てもらうことが大切です。
腎臓や膀胱の病気は尿の流れが妨げられたり、尿が膀胱から腎臓に逆流するような状態を起こしたりするため、腎機能障害や感染症になりやすいのが特徴です。
先天的な胎児期からの腎尿路の異常は、腎臓の組織が正常に形成されない「多嚢胞性異形成腎(たのうほうせいいけいせいじん)」や、尿の通り道が狭くなることが原因の「水腎病」や「巨大膀胱」などが挙げられます。ほかにも陰茎の形態異常である「尿道下裂」も先天性異常です。
これらの症状は、出生前の胎児超音波検査で羊水量の異常や、胎児腹部の嚢胞性腫瘤の存在などにより発見されやすいのが特徴です。
胎児水腫とは、胎児の胸部や腹部、皮膚の下、内臓部などに水が貯まっている状態の疾患を指します。母体と胎児の血液型不適合による「免疫性」と、それ以外の事柄が原因の「非免疫性」に分かれますが、約9割の胎児水腫はウイルス感染や染色体異常、心臓構造異常などが原因の非免疫性です。
妊婦健診の超音波検査の所見で判明することがほとんどです。胎児水腫と診断された場合、血液検査や染色体検査、問診などで原因を追究します。しかし原因不明なケースもあり、症状も多岐にわたるために治療法が確立されていない病状もあります。
羊膜索症候群は、先天性の奇形症候群のひとつです。
妊娠ごく初期、数ミリの小さい胎芽が羊膜でできた水風船の中にいるのですが、この羊膜でできた風船が何らかの要因で破裂し、飛び散った風船の破片が柔らかい胎芽に接触したり、巻き付いて発達を阻害したりすることを先天性の羊膜索症候群を呼びます。
羊膜索が巻きついて障害がおこるのは頭・顔・手足・臍帯など小さい胎芽からでっぱった部位がほとんどです。子宮内の事故なので、障害の程度はさまざまです。
頭や顔にかなり重症の障害が起こる場合をのぞき、多くのケースは、妊婦健診の超音波検査では診断されません。また妊娠後半になると羊膜索症候群を診断することはかなり困難になります。妊娠初期からの専門医による胎児ドックが推奨されます。
22q11.2欠失症候群(かつてはディジョージ症候群と呼ばれたりもしていました)とは、生まれつき胸腺が正常に機能しないという先天性の免疫不全疾患の一種で、常染色体である22番染色体の微細欠失によって起こります。心臓や副甲状腺、顔面の形成などに異常がみられます。
胸腺が機能しないとリンパ球が少なくなり、結果としてウイルスや細菌など感染症に対する免疫力が低くなります。副甲状腺も正常に機能しないため血中のカルシウム量も低く、筋肉のけいれんや心不全をきたす場合も。この心不全がもっとも注意すべき症状で、治療の基本は手術になります。
出生前診断は可能ですが、通常の絨毛検査・羊水検査では見つからず、22番染色体のこの部分の特殊なFISH検査というのを特別に依頼するか、マイクロアレイ検査などを行わないと診断はできません。
ターナー症候群は、先天的な性染色体異常によって発症する疾患です。1,000人から2,000人に1人の割合で女性だけに発症します。女性には2本のX染色体がありますが、ターナー症候群の人はX染色体の1本の一部、または全体が失われています。
ターナー症候群の赤ちゃんは、成長期になってから診断される場合もあります。知能的問題を抱えることはあまりないようで、医師・看護師・その他の知的職業についておられる方もおられます。が、第二次性徴がこないことが多く、治療を進められなかった際は、成人しても身長が140cm前後までしか伸びないことが特徴です。
出生前診断では、染色体検査で判明します。
人の染色体は全部で46本あり、パパとママから半分ずつ受け継ぎます。「染色体異常」には、染色体の数が多かったり少なかったりする「数の異常タイプ」と、形に異常がある「構造異常タイプ」に大きく分けることができます。
「数の異常タイプ」で最も多いのは、21番染色体が1本多い「21番トリソミー異常(ダウン症候群)」です。しかしダウン症は、親からの遺伝による発症はまれで、その確率は全体の2%程度となっています。そのほかの発症は遺伝が原因ではなく、受精卵が分裂するときに偶発的に起こるケースがほとんどだといわれています。
反対に「構造異常タイプ」の場合、両親のいずれかが保因者(キャリア=症状はないが染色体の構造異常を保持している)の可能性があり、子どもに遺伝するケースがあります。
「先天性異常」とは、生まれつき身体や内臓の形、構造、働きに異常があることをいいます。先天性異常で生まれてくる赤ちゃんのうち、染色体変化による要因が約25%、遺伝子変異によるものが約20%といわれています。このように先天性の遺伝子変化は、両親が持つ遺伝子を受け継ぐケースもあります。発生時期や妊娠中に胎児に影響力のある薬の服用、何かしらの感染症などによるケースも多くあります。
また、妊娠初期は内臓など身体の重要な部分がつくられる大切な時期です。発生異常が起こる確率は誰にでもあり、胎児のさまざまな部位に奇形を生じる可能性があります。多くの因子が関係して先天異常が起こる場合や、ウイルス感染、薬などにより先天異常が起こる場合もあり、染色体異常や遺伝子変異が何もなくても先天異常の赤ちゃんが生まれてくることがあります。
生まれてくる赤ちゃんに先天性の病気がある可能性はみなさんが思っているより高く、20-30人にひとりはいます。赤ちゃんの病気は妊婦健診で気づかれることもありますが、まったく気づかれずに順調と言われている方もたくさんいます。 胎児ドックなど、詳しい超音波検査をしている施設で、しっかり専門の先生に診てもらってくださいね。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
出生前診断を受けたいという気持ちは、「赤ちゃんが元気に生まれてきて欲しい」と願う親としてごく自然な想いだと私は考えます。もし出生前診断で染色体疾患が判明しても、それは赤ちゃんのせいではもちろんないし、パパやママ、誰のせいでもありません。出生前診断を受けることで、両親にも心構えを持つ時間が生まれ、適切な医療を準備する期間にもなります。どんな結論にしろ、赤ちゃんのことを真剣に考える家族に対して、私たちは全力でサポートさせていただきます。
夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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