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こちらのページでは、心室中隔欠損症と心房中隔欠損症の症状や出生前診断との関係、治療法についてご紹介します。
心臓には右心房・右心室、左心房・左心室の4つの部屋があります。そのうち下方にある右心室と左心室の間を隔てる壁(心室中隔)に穴があいた病気のことを「心室中隔欠損症」と呼びます。新生児1,000人あたり約3人の割合で存在する先天性疾患です。ダウン症、18トリソミーその他の染色体異常などにも合併することが多いとされています。
出生時の全先天性心疾患の中ではもっと多く、ある病院のデータでは約半数を占めるとされています。穴が小さい場合は、成長とともに自然に閉じる可能性もあります。
心房中隔欠損症とは、右心房と左心房を隔てている壁(心房中隔)に先天的に穴があいている(欠損している)病気のことです。出生時の全先天性心疾患の中では約5~6%を占めるといわれています。
お腹の中の赤ちゃんは、お母さんの中にいる時はへその緒があるために自分で息をする必要はありません。そのために肺は機能しておらず、酸素をいっぱい含んだ血液はへその緒を通して心房中隔の穴(卵円孔)を通り、赤ちゃん自身の体に流れるようになっています。つまり胎児の時は、だれでも左右の心房を隔てる壁に穴があって血液の交通があるのです。
通常この卵円孔は、出産後、肺機能の活動開始とともに自然に閉じて、ただのくぼみになります。しかし生まれた後も穴が残ってしまうと、心房中隔欠損となるのです。最も多いのが卵円孔の位置にあるタイプですが、それ以外の場所に穴があいている場合もあります。
卵円孔が胎児期に開いていることが正常なので、生まれる前に心房中隔欠損を見つけることはとても難しいとされています。
心房中隔と心室中隔のつなぎ目の欠損で、房室中隔欠損とよばれたり、左右の心房と心室の間の弁である僧帽弁と三尖弁がくっついてひ1つになっているので共通房室弁口とよばれたりすることがあります。心室中隔欠損をともなう完全型と、ともなわない不完全型に分けられます。
完全型の房室中隔欠損症の約半数~2/3はダウン症候群をともなっています。逆にダウン症候群の患者さんの45%は完全型ないし不完全型房室中隔欠損症を合併しています。またそれ以外の染色体異常に合併することもあります。
医療機器の発展により、最近では先天性の心疾患胎児を超音波検査(エコー)で発見することができるようになってきました。ただし発見できる割合は70~80%ほどです。胎児の心臓がある程度成長する妊娠7~8カ月頃に、心臓構造をカラードップラーや特殊モードによるエコーで診断します。
心室中隔欠損症は心房中隔欠損症より見つけやすい傾向がありますが、他の心臓疾患よりも見つからないことがあります。というのは、心室中隔に穴が空いていても胎児期には血流がその穴を通らないことがあり、生後すぐにも血流が確認されないこともあるためです。この穴に血流が通りだすと心雑音が聴取されて初めてわかることもあります。
このとおり、心房中隔欠損は見つかることは稀です。房室中隔欠損症は弁の形に異常があるため見つかることは多く、ダウン症との関係もあることから、羊水検査をして確認することもあります。
出産後は、新生児検診や乳児検診で発見される場合がほとんどです。心雑音が特徴的なので、所見のあとにエコー検査や心電図などを行います。
妊娠4週から8週目の頃、1つの心室だった部分に左右の部屋に分けるための壁(中隔)ができはじめます。その時に、きちんと壁を隔てることができなかったのが「心室中隔欠損症」だといわれています。
穴の開く箇所は個人差があり異なりますが、一番多いのが、最後にしきりができあがる部分(膜様部)の欠損型です。
心室中隔欠損症の症状は、軽いものから重度のものまでさまざまです。比較的大きな心室中隔欠損症の場合は生後6~8週で現れはじめ、荒い呼吸やミルクを飲むのが困難、発汗、元気がない、体重増加の遅れなどがみられます。
本来であれば、全身に血液を送り出す役目の左心室と、肺に血液を送る役目の右心室は壁があります。しかしその壁に穴があるため、血液がショートして流れ込みます。そうなると通常より多くの血液が肺に送られることになり、肺の血管の血圧が上昇して肺高血圧を起こすことがあります。
心房中隔欠損症の場合、乳幼児から10代にかけて症状が現れることはあまりありません。しかし、治療されていない大きな心房中隔欠損症は、20代後半~30代になると呼吸困難や動悸、息切れなどの症状が起こり、脳卒中や肺の高血圧につながる可能性があります。
穴が小さい患者の場合、手術治療や内服治療なしでも通常の発育が見込まれます。重症な症例になると、誕生後まもなく欠損孔をパッチで塞ぐ早期手術(心室中隔欠損孔閉鎖術)が必要になることも。一般的には心室中隔欠損症と診断された後は、強心剤と利尿剤を使用して心機能の改善を図り、心臓カテーテル検査などを行って根治手術をします。
乳児期に見つかった小さな穴の場合、2歳の頃までに自然に閉じることもあります。しかし、直径8mm以上の穴になると自然に閉じるのは困難になるため、薬の投与で内科的治療を行うか、手術による治療、またはカテーテル治療で心房中隔欠損閉鎖術(あなとじ)を行う必要があります。
分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。
所在地:大阪府大阪市天王寺区上本町7-1-24松下ビル3F/問い合わせ:06-6775-8111
※開院年度・実績については同院HP参照
心臓の病気は胎児期に見つからないこともありますが、生まれてから症状が強くでるような心臓病は生まれる前に見つかっていたら生後赤ちゃんが苦しい思いをせずに速やかに治療を受けられることになります。
胎児心臓を見慣れている心臓専門医でも心室中隔欠損を胎児の時期に見つけられないこともあります。何度か胎児心エコーを受けることが勧められます。
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夫 律子(ぷぅ りつこ)
クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)
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