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流産とその原因

妊婦さんやパートナーにとって避けたい事象であるにも関わらず、ある日突然起こってしまう「流産」。このページでは、妊娠に関する基礎知識のうち、流産にまつわるものを解説します。

流産とは何か

流産とは、妊娠22週未満に何らかの理由で胎児が分娩されてしまったり、妊娠が継続できなくなることをいいます。これに対し、妊娠22週以降、36週6日未満の赤ちゃんを出産することを「早産」、妊娠12週以降であり、お腹の中で亡くなってしまった赤ちゃんを出産することを「死産」といいます。

流産はすべての妊娠の10~20%の頻度で起こると言われており、多くの人が直面する問題です。また、流産には原因や子宮内などの状態によってさまざまな種類があり、それぞれに名前がつけられています。

流産の種類

流産してしまった場合は、週数や子宮内の状態などに応じて母体への処置を検討します。子宮の内容物を取り除くための手術が行われることもありますが、場合によっては自然に体外に排出されるのを待つこともあります。

流産の兆候

流産しかかっている、あるいは流産してしまった時に現れる兆候(体のサイン)には、主に次のようなものが挙げられます。

妊娠中に上記のような症状が現れた時や「いつもと違う」「何かおかしい」と感じる時には、早めにかかりつけの産婦人科に相談しましょう。とくに、複数の症状が同時に現れる時や、症状の程度が強い時には、すみやかな受診が必要です。

※これといった自覚症状が現れず、健診を受けてはじめて流産が分かるケースも多くあります。

切迫流産とは

流産しかけている状態、あるいは流産のリスクが高まっている状態のことを「切迫流産」と呼びます。

これまでに紹介したような本格的な流産に至ってしまった場合、残念ながら赤ちゃんを助けることはできません。しかし、切迫流産の段階であれば、場合によっては妊娠を継続できる可能性があります。

切迫流産と診断されたら

切迫流産の診断を受けた時は、できる限り体への負担を避け、医師の指示に従って安静を保ちましょう。

仕事はもちろん、家庭内での家事や育児においても無理をせず、周囲の協力を得ながらなるべく静かに過ごします。体の状態によっては「トイレに立つ以外、入浴を含む一切の運動を避ける」「入院して安静を保つ」といった厳重な対処が必要になることも。

また、安静生活を送る時は、できるだけ精神的にもリラックスすることを心がけましょう。自分を責めたり、過度な不安に陥ったりしてストレスを溜めないよう、ゆったりと前向きな気持ちで過ごすことが大切です。

流産の原因

流産の原因となる要素の例には、次のようなものが挙げられます。

胎児側の原因

赤ちゃん(胎児)側に考えられる原因は、主に次の2つです。

染色体異常

両親から子どもへと受け継ぐ時に染色体に何らかの異常が起き、赤ちゃんが上手く成長できなくなってしまう状態です。

流産の大半は妊娠初期(妊娠12週まで)に起こる早期流産であり、早期流産の原因のほとんどはこの染色体異常であると言われています。そして、染色体異常は誰にでも偶発的に起こり得るものであり、予防や治療を行うことは困難です。

遺伝子疾患

遺伝子の1つ、または複数に変異が生じている状態です。こちらも染色体異常と同じく、事前の対策で防ぐことは難しいと言われています。

両親側の原因

流産の原因となる要素のうち、赤ちゃんのママ・パパ側に生じるものは多岐に渡ります。ここでは、外傷や妊娠中の感染症以外で考えられる原因の一例を紹介します。

黄体機能不全

女性ホルモンの1つである、プロゲステロン(黄体ホルモン)が十分に分泌されない疾患です。

プロゲステロンとは、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整えたり、妊娠を継続させたりする役割を持つホルモンです。そのため、プロゲステロンが不足すると受精卵がうまく着床しにくくなり、流産してしまうことがあります。

子宮頸管無力症

子宮の入り口あるいは出口にあたる部分(子宮頸管)が赤ちゃんの重みに耐えられず、緩んで開いてしまう状態です。妊娠中期以降に現れる症状で、流産や早産の原因となることがあります。時に妊娠早期に症状が現れることもあります。

なぜ子宮頸管無力症が起こるのか、具体的な原因はまだ明らかになっていません。また、はっきりとした自覚症状も現れにくいといわれています。

子宮筋腫

子宮筋腫とは、子宮の壁にできる、こぶのような良性の腫瘍のことを指します。30歳以上の女性の20~30%にみられると言われるポピュラーな疾患ですが、筋腫の大きさや位置によっては受精卵の着床率を下げたり、流産や早産を起こしたりする原因となることがあります。

子宮奇形

子宮の形に、生まれつき異常がある状態です。子宮が二つあったり、子宮野中の形がハート型であったりすることがあります。子宮奇形のある女性でもとくに問題なく妊娠出産を行えることもありますが、形状によっては流産や早産、難産の原因となることもあります。

染色体異常

赤ちゃんのパパやママの染色体に何らかの異常が見られると、流産の原因となることがあります。

多くは均衡転座といって、染色体の一部と別の一部が入れ替わっている場合です。染色体のすべての合計は合っているので、パパやママに症状が出ることはありません。均衡をたもったまま赤ちゃんに伝われば何も問題はありませんが、不均衡となって赤ちゃんに伝わることがあり、流産の原因となることがあります。

※参考:公益社団法人日本産婦人科医会「1.総論」

流産を繰り返す時は

流産を2回繰り返すことを反復流産、3回繰り返すことを習慣流産といいます。このような場合は、流産や死産を繰り返してしまう「不育症」の可能性を疑い、詳しい検査を行うことがあります。

しかし、流産を複数回経験することと、出産を望めないことはイコールではありません。中には、たまたま染色体異常による流産を複数回繰り返してしまったケース=赤ちゃんの両親には何の原因もなく、次の妊娠・出産にはまったく影響のないケースも多いのです。

また、妊娠を望む女性とパートナーとの間に何らかの原因(疾患)があった場合にも、適切な検査や治療を受けることで、最終的には8割以上の人が無事に出産することができるといわれています。

流産を予防するには

妊娠中の喫煙は、流産のリスクを高めることが分かっています。また、カフェインの摂りすぎも流産のリスクと関連性があるといわれているため、妊娠中は禁煙・禁酒と並行して、カフェインの過剰摂取にも注意するとよいでしょう。

ただし、1日1~2杯のコーヒーや紅茶を飲んだ程度では、妊娠の継続に悪影響を及ぼすことは考えにくいとされています。好きな飲み物を飲んでリラックスすることは、むしろ心身にとってプラスとなることも。不安になりすぎないよう、心身ともにゆったりと過ごすことを心がけましょう。

もしも流産してしまったら…

流産の原因のほとんどは、防ぐことのできない赤ちゃんの染色体異常によるものだといわれています。染色体異常は妊婦さんが「重いものを持った」「まだ妊娠に気づいていないころ、お酒を飲んだり薬を服用したりした」といった要素の有無に関わらず起こるもので、誰にも責任はありません。

流産してしまった時に過去の行動を後悔したり、思わず自分を責めたくなったりするのは、あなたが赤ちゃんに対して深い愛情を持つ親である証拠です。残念な結果となってしまった場合も、自分を責めすぎないでください。傷ついた心身をしっかりと癒すことは、次の妊娠をより健やかなものにすることにもつながります。

流産した場合には、流産ででてきた絨毛などで染色体検査が可能です。きちんと調べて染色体異常などが見つかった場合には、ママは不必要に自分を責めたりする辛さから解放されます。

また、赤ちゃんの染色体の不均衡転座がわかった場合には、パパ・ママの染色体を調べて均衡転座がないかを確認し、その後の妊娠の場合に何を心配すればいいかを確認することもできます。

つらい気持ちが続く時は…

大切なお腹の赤ちゃんを亡くした時、つらく悲しい気持ちになるのは当然のことです。無理に普段通りに振舞おうとせず、心や体の声に耳を傾けながら、自分のペースでゆっくりと回復を待ちましょう。

心を癒すためには、ネットや妊娠に関係のある書籍などから離れ、情報を遠ざけることも有効です。家族や信頼できる人に今の気持ちを聞いてもらったり、サポートをお願いしたりしても良いですね。

また、日常生活に支障をきたすほどの強い気持ちの落ち込みが続く時は、精神科や心療内科といった心の専門医のケアを受けることも検討してみましょう。かかりつけの産婦人科に現状を相談し、対応してくれる医療機関を紹介してもらうのもひとつの手です。

Dr.ぷぅからの一言
夫律子先生

流産や早産を経験した人は意外に多いものです。その原因をきちんと特定することで、精神的な負担から解放されることもあります。原因がわからないという場合、次の妊娠をされたときにずっと不安を感じている妊婦さんはとても多いです。私のところではそのような方は1-2週間ごとに一緒に赤ちゃんをみながら妊婦さんの精神的サポートをしていますが、赤ちゃんに会うことでママには目に見えないエネルギーをもらえることを実感しています。

夫律子先生

夫 律子(ぷぅ りつこ)

クリフム出生前診断クリニック 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/日本人類遺伝学会・日本遺伝カウンセリング学会認定 臨床遺伝専門医ほか)

【監修】クリフム
出生前診断クリニック
日本初の胎児診断専門施設

分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。

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