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新型出生前診断(NIPT)の現状と課題

2013年4月に臨床研究の一環としてスタートしたNIPT(新型出生前診断)。日本医学会やその他の学会が軸になり、対象妊婦の条件や認定施設を設けて実施していますが、その一方で無認可施設での検査も横行しています。

こちらのページでは、NIPTの現状とこれから予定されている改正について紹介していきます。

従来の出生前診断とNIPTの違い

従来の出生前診断とは、非確定検査の「超音波(エコー)検査」「母体血清マーカーテスト」「エコーと血清マーカーの組み合わせ検査」と、確定的検査の「絨毛検査」「羊水検査」のことです。

母体の血液で診断する「母体血清マーカーテスト」「エコーと血清マーカーの組み合わせ検査」は、母体&お腹の赤ちゃんへのリスクはないものの、精度が約83~90%と低いのがデメリット。反対に「絨毛検査」と「羊水検査」の精度はほぼ100%ですが、流産や早産、感染症のリスクがあるのが難点とされています。

「NIPT」は非確定検査に分類されるものの、母体とお腹の赤ちゃんへのリスクなし(母体からの採血だけ)で、13番・18番・21番の染色体数的異常に関する結果が得られるのが特徴です。

超音波検査や母体血清マーカーテストと同じく非確定検査のため、「陽性」の結果が出た際は確定検査を受けて、染色体異常について詳しく調べてもらうことになります。

新型出生前診断(NIPT)の現状

日本産科婦人科学会では倫理委員会を設置して、さまざまな視点で議論を重ねてNIPTを開始しました。委員会での指針に基づきNIPTができる実施施設を限定し、臨床研究として導入。検査前には遺伝カウンセリングの専門家が妊婦さんにカウンセリングする、高齢出産を対象にするなどの厳しい条件を付けています。

しかしNIPTが始まって数年のうちに、営利目的による認可外の産婦人科でない民間施設が急増。誰でも気軽にNIPT検査を受けられることをウリにして、十分な受け皿がないままの検査が横行するようになりました。このような施設での検査後トラブルが報告されています。

NIPTは積極的に医師から提案する検査ではない

出生前診断は慎重に行わないと、検査結果により「命の選別」につながるという意見が根強くあります。

そのため、産婦人科の医師が「気軽にできる検査だから」とNIPTを積極的に勧めることはありません。医師が検査を促す場合は、過去に染色体異常のお子さんを妊娠した方、高齢出産の方、トリソミー疾患の疑いがある胎児を妊娠している方などが対象です。

NIPTの検査結果によって妊婦さんやご家族は産む・産まないという選択に葛藤し、中絶を選んだ場合はとくに心身の傷をその後も長く抱えこむ女性が多くいらっしゃいます。

人生を左右する選択が迫られる検査のため、日本産科婦人科学会でも積極的に妊婦さんに勧めることを推奨していないのです。

妊婦さんが正しい情報を持たずに検査を受けてしまう

母体の血液で検査できるNIPTは、無認可施設でも受けられますが、無認可施設の多くは専門医療外の美容外科、美容皮膚科、精神科、耳鼻科、循環器内科といったクリニックが行っています。採血してその血液を提携する検査機関に送るだけの役割なので、妊婦さんへ検査に関する十分な説明ができないのが現状です。また、産婦人科でないのでNIPT採血をする前にお腹の赤ちゃんが生きているかどうかのチェックを超音波で行うこともできません。

日本産科婦人科学会から認定された施設では、専門家による検査前の遺伝カウンセリングで、

などの説明があります。その内容に夫婦で同意して、初めて受検が可能になります。

遺伝カウンセリングのない無認可施設では、正しい情報を持たずに検査を受けてしまうことでトラブルが起こりやすくなります。

認可施設と無認可施設がある

NIPTの認可施設とは、日本医学会と日本産科婦人科学会の指針に従い、認定を受けて検査をしている施設のことです。主に大学病院や都道府県の基幹病院などが認定施設として登録されています。以前は臨床研究として認定を受けると言うことになっていましたが、臨床研究も終了しています。

そして無認可施設とは、認可施設以外でNIPTを行っている施設のこと。2020年春に調査したところ、無認可施設は54施設におよび、そのうち40施設が遺伝カウンセリングをしていませんでした(実際には施設数はどんどんと増えていっているようです)。

認可施設では、検査実施前と検査後に専門家によるカウンセリングが義務づけられています。これは検査の内容を妊婦さん夫婦に知ってもらうこと、そして結果が陽性の場合、話し合って解決へ導くための受け皿となっているからです。

無認可施設でNIPTを実施することは違法ではありません。しかし、安易に検査できることから、主治医にも相談できないまま受検する妊婦さんも少なくなく、その後の検査結果に混乱するケースが報告されています。

偽陰性・偽陽性の可能性がある

NIPTの検査の結果は陽性・陰性で報告されます。まれではありますが、採取した血液中に胎児のDNAが少ないときには「判定保留」で返ってくる場合もあります。

もし「陽性」と結果を受けた場合、確定検査の羊水検査を行います。この検査で「陰性」が判明すると、NIPTの結果は「偽陽性」だったことになります。反対のケースも同様に「偽陰性」と呼びます。

例えば40代の妊婦さんの場合、NIPTの陽性的中率は約95%というデータがあります。その数字からすると100人の妊婦さんに陽性結果の診断がされても、そのうち5人は「偽陽性」の可能性があるわけです。20代の妊婦さんの場合は、陽性のうち約半分は「偽陽性」となるのです。

精度が高いと言われているNIPTですが、NIPTの結果だけを信じ、確定検査を受けずに中絶に踏み切ってしまう女性もいるようです。偽陰性・偽陽性の可能性があることを心に留めて、信頼できる医師に相談をしましょう。

日本産婦人科学会によるNIPTの考え方

NIPTの診断対象となるのは、染色体の数的異常です。

もし特定の染色体(13番・18番・21番)の陽性が確定した際、赤ちゃんを出産する時の対応や成長過程を見据えた準備ができるというメリットがあります。その一方で、事前に染色体異常を知ることで、お腹の赤ちゃんの中絶や染色体数的異常を持つ子どもへの生命否定につながるのでは、日本産科婦人科学会は懸念しています。

欧米社会に比べると、日本は障害を持つ人への社会的受容が未熟とされています。このような環境下にあって、周産期医療に関わる医師らは、障害を持って生まれた子ども達が出生後どのような支援や介助が必要なのか、どのように育っていくのかという知識を深めるべきと考えています。

今後NIPTは、産婦人科医と小児科医、遺伝専門医らの協力および連携を密にし、患者へ情報提供をするだけでなく、心理的・社会的支援も実施する方向へと検討されています。

凍結状態になっていた実施指針の一部を改定したと発表(2020/08/03)

 

日本産科婦人科学会では、拡大する無認可施設でのNIPT実施に歯止めをかけるため、実施指針の一部を改定しました。今後は検査機関を増やし、これまで以上に妊婦さんに寄りそった検査体制を整えていく方向です。

主な改定内容は、日本小児科学会・日本人類遺伝学会・日本産科婦人科学会・日本産科婦人科遺伝診療学会が協力して支援体制の条件を決め、小規模な医療機関でもNIPT実施を可能にすることです。

支援体制の主な条件は次の通りです。

2020年12月現在、これらの改訂指針の運用は厚生労働省からの検討結果を待っている状態です。

NIPTを受けてどうすればいいか迷ったら

NIPTの検査結果が陽性となった場合、あるいは「NIPTは陰性だったが、その他の先天性異常などが気がかり」などの悩みは、できるだけ早く担当医に相談しましょう。

もし、担当医に言えないままNIPTを勝手に受けたので相談しづらい、ドクターとの相性があまりよくない、決まった担当医がいない、などの理由で悩みを抱え込んでいるなら、NIPTの検査後の妊婦さんに寄り添ってくれる病院・クリニックに相談してみてください。

当サイトの記事を監修してくださっているクリフム出生前診断クリニックでは、NIPT陽性となった場合の検査手順をしっかり決めており、絨毛検査や羊水検査を実施しています。NIPTの検査結果に悩んでいる妊婦さんに寄り添い、確定検査後には必要に応じて適切な医療機関への紹介も行っています。

Dr.ぷぅからの一言
夫律子先生

NIPTを受けることを否定するわけではありませんが、お腹に宿ってくれたかわいい赤ちゃんの検査であることを忘れてはいけません。赤ちゃんの命を左右するかもしれない出生前診断です。安易に考えず、真剣に考えて受けるかどうかを判断しましょう。
実際には、ここに書かれている3つのトリソミー以外のトリソミーや、微細染色体異常などまでを検査する無認可施設も増えており、それらで「陽性」となった妊婦さんが主治医にも相談できずに困る状況もあります。微細染色体異常などが陽性と出た場合、偽陽性の可能性もありますが、通常一般に行われている羊水検査では微細染色体異常を判定することはできません。特殊なFISH検査やマイクロアレイ検査が必要になります。これらの検査ができる施設でないと確定検査はできないので注意が必要です。

夫律子先生

夫 律子(ぷぅ りつこ)

クリフム出生前診断クリニック胎児診断センター・胎児脳センター 院長(日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医/日本超音波医学会認定超音波専門医/臨床遺伝専門医ほか)

【監修】クリフム
出生前診断クリニック
日本初の胎児診断専門施設

分娩・不妊治療・婦人科治療は扱わず、胎児診断を専門とする施設として2006年に開院。絨毛検査13,414件・羊水検査2,098件と、専門施設として実績豊富(2009年~2019年累計)。大学病院から紹介があるほど医療関係者から信頼が厚く、全国から妊婦さんが集まります。

クリフム出生前診断クリニック クリフム出生前診断クリニック

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